Abusan’s Journey

Photography, Drive, Journey, Camera

LG V60 ThinQ 5G ドコモ版 レビュー「2画面であることに価値があるが、それ以外は……」

ドコモオンラインショップのセールで約4万円引きのLG V60 ThinQ 5Gを購入しましたのでレビューしたいと思います。

f:id:abusan3225:20210802144501j:plain

LG V60 ThinQ 5Gは最近になってGalaxyなどが出してきた2画面スマホの一つですが、本体は普通のスマホとしても動作しLGデュアルスクリーンを装着することで2画面になります。曲がるディスプレイなどが不要なためコストを下げて端末価格を抑えながら2画面の恩恵を受けられます。
運転時にカーナビと車載配信を同時に行うことが目的でしたが、Quad DAC構成を採用しているためDAPとしての性能も期待できそうだということで、通勤時はDAPとして、車での旅行の際はカーナビと車載配信用として使用するというのが購入時の目的になりました。

開封

f:id:abusan3225:20210802144646j:plain
中は本体とデュアルスクリーンが別々に入っています

本体

f:id:abusan3225:20210802144720j:plain
箱を開けると本体とご対面

f:id:abusan3225:20210802144843j:plain
本体、SIM外し工具、マニュアルのみ

今まで買ったスマホの中で一番付属品が少ないスマホでした。せめてイヤホンくらい付けてほしかったけど、デュアルスクリーンを除いたら本体の値段は10万を切ってくるためそんな余裕は無いんでしょう。

f:id:abusan3225:20210802145512j:plain
特に変わったことは無いデザイン

f:id:abusan3225:20210802150003j:plain
背面も特に変わったことはありません。強いて言えばdocomo 5Gロゴが目立ちます

f:id:abusan3225:20210802150137j:plain
操作系は左側に音量ボタンとGoogleアシスタントボタン、右側は電源ボタンのみです

デュアルスクリーン

f:id:abusan3225:20210802145437j:plain
デュアルスクリーンは別の箱

f:id:abusan3225:20210802150302j:plain
背面は鏡面仕上げで一部はディスプレイになっています

f:id:abusan3225:20210802150225j:plain
付属品はマニュアルと充電用のアダプター

f:id:abusan3225:20210802150337j:plain
開いた状態

f:id:abusan3225:20210802150355j:plain
デュアルスクリーン装着状態

スペック

Snapdragon 865に8GB RAM、ストレージは128GB、最大1TBまでのmicroSDXCカードを1枚まで使用できます。
発売当時のハイエンドスマホとしては普通のスペックです。少し内蔵ストレージが少ないかなと思いますがSDカード対応なので十分でしょう。
デュアルスクリーンの単体価格は不明ですが、デュアルスクリーン無しでもスペックだけ見ればかなりお買い得なスマホです。
V60の特徴はハイエンドなのにあまり熱くならないところです。後述するバッテリー持ちも発熱を抑えるためにいろいろと頑張っているようです。

携帯性

本体のみなら普通のハイエンドスマホと同じくらいです。少しポケットには余るところも同じ。
デュアルスクリーンを装着すると重さは353g、サイズは177×166.3×15.0mmと圧巻のサイズになります。サコッシュなどに入れるとかなりの重さは感じます。

バッテリー

5,000mAhバッテリーを採用しています。一日中ワイヤレスイヤホンで音楽を聴いても大丈夫でした。バッテリーの持ちはかなり良いほうだと思います。

カメラ

6400万画素と1300万画素のデュアルです。

f:id:abusan3225:20210802150930j:plain

他の所有スマホと比較してみました。
比べてみると少し色が薄いかなと思いますが結構頑張っていますね。同じ画素数のROG Phone 5と比べるとV60のほうが解像度が良く、300%まで拡大しても細かいディティールが残っています。
HDRがオンになる環境ではコントラストが少し改善されます。

f:id:abusan3225:20210802160252j:plain f:id:abusan3225:20210802160301j:plain

同じ画素数のV60とROG Phone 5を拡大しました。
V60は細かい線のディティールが残っていますがROG5は潰れています。

操作性

画面の反応

SDM865なので反応は上々です。全くストレスを感じません。しかしSDM865を採用しているなら当たり前だとも言えます。

ボタン類

適度なクリック感があります。それぞれのボタン単体では特に不満はありません。
デュアルスクリーンを装着して画面を開いた状態だと本体左側の操作性が制限されます。デュアルスクリーン側の画面がボタンを隠してしまうため、音量の操作やスクリーンショット撮影はデュアルスクリーン側画面を少し立ててから押さなければならず不便です。操作にワンテンポの間を挟むことになるため全てのボタンを右側に集約すべきです。
Googleアシスタントボタンは他の機能へ割り当てることはできず、使用するか無効化の2択になります。できればスクリーンショットなどに割り当てることができるようになってほしいですね。

スクリーンショット

スクリーンショット撮影後に編集などを行う表示が右下に数秒間残ります。画面外へフリックして消すこともできないため非常に不便です。
連続したスクリーンショット撮影は可能です。

デュアルスクリーン

V60一番の特徴はデュアルスクリーン装着で2画面になることで、V60を使いこなすにはデュアルスクリーンの挙動の理解は必須になります。
デュアルスクリーンはそれぞれでホーム画面を持っていて、それぞれの画面でアプリを呼び出せます。通知は本体画面のみです。
デュアルスクリーンを快適に使わせようとLGはいくつかのサポート機能を実装しています。

デュアルスクリーンツール

2画面間でのフォアグランド状態のアプリの移動、入れ替え、デュアルスクリーンのON/OFFが行えます。

逆折り

デュアルスクリーンを逆方向に折ることもできます。その場合の画面表示をOFF/節電/ONから選べます。
個人的にはあまり役に立つ用途が思いつきません。OFFに設定しています。

明るさの個別設定

画面の明るさを別々に設定できます。自動調節を両方の画面で同期させることもできます。

ワイドモード

デュアルスクリーンの2画面を1つのアプリでフルに使用する機能です。
折り畳みスマホと違って間にフレームがあるためか、あまり使い勝手は良くありませんでした。

マルチアプリ

指定した2つのアプリを両方の画面へ同時に起動させることができます。ホーム画面へのショートカットの設置が可能です。

デュアルスクリーンアプリ

デュアルスクリーンをONにした時に自動で実行するアプリを設定できます。

壁紙を両方に設定する

1枚の壁紙を両方に設定したり、1枚の画像からデュアルスクリーン用に繋がったような壁紙を設定できます。もちろん個別に別の画像も設定できます。

f:id:abusan3225:20210802152905j:plain f:id:abusan3225:20210802152921j:plain

f:id:abusan3225:20210802153030j:plain
Harmony 4 Youのアナザーアピールを設定できます

f:id:abusan3225:20210802153730j:plain
担当で4 Youさせることもできます

DAPとしての性能

V60はESS Technology ES9219PをQuad構成にしています。LGのスマホは音質にこだわっているとわかる部分ですが、実際にDAPの代わりとして使えるのかどうかはまた別です。
DAPとしてアイマスコラボモデルのPioneer XDP-20 MLを使っていましたが、プレイリスト周りの操作感や付属ソフトの不便さ、そして何よりも「なうぷれ」ができないことがネックで買い替えを検討しています。
V60はスマホなのでなうぷれはできて当たり前。あとは音質がXDP-20と比べて遜色なければ合格です。

HiFi Quad DAC

イヤホンジャックにイヤホンを接続した状態でHiFi Quad DACをオンにできます。
おそらくオフにするとSingleまたはDual構成となり、オンにするとQuad構成でよりノイズ成分を除去できるようになるため音質が向上するということでしょう。S/N比が向上するということですな。オフの状態ではどのような構成になっているかは公表されていません。
ただ、必要な部分までノイズとして除去してしまうため、アリーナでのライブ音源やクラシック、ジャズのライブなどノイズと判定されるものが重要な音源はオフのほうが臨場感があると感じられる場合もあります。

イヤホンはAcoustune HS1300SSにSednaEarfit Crystalを組み合わせたものを使用しています。延長ケーブルなどは使用せずV60本体と直接繋いでいます。
実際にオンにしてみると解像感が少し良くなった印象を受けます。全体的な広がりに僅かな物足りなさを感じますが好みの問題と言えるレベルです。クリアな音は女性ボーカルとの相性も良く、低音も良い感じに響く鳴り方です。
もちろんSingle DACだったり特に音にこだわっていないスマホと比べれば良いと感じる音質です。もう少しだけこだわったチューニングを行ったりしたほうが間違いなく商品としての価値がプラスされたでしょう。

所有しているDAP「XDP-20」と比べると解像感や音の広がりなど全体的にXDP-20のほうが良いと思えます。しかしV60はスマホなので大画面とSDM865の性能で快適な操作を行えるのは大きなアドバンテージです。XDP-20は画面が小さくプレイリストの管理は一歩劣ります。そして「なうぷれ」はできません。

V60本体に直接繋いだ場合はDAPスマホとして十分な性能です。問題はデュアルスクリーンを装着した状態でDAPとして使おうとすると延長ケーブルを使用しなければならないことがあり、イヤホンによっては音質に影響があります。詳しくは後述します。

デジタルフィルター

DACに内蔵された機能で、デジタル信号をアナログ信号へ変換する際にどのような波形へ変換するかを選択できます。Quad DACを有効にしないと設定できません。

  • ベーシック
    音の立ち上がりに優れますが不要なエコーが残ります。音の定位に影響がありますが、不要な音の立ち上がりがありません。
    音の解像度が良くなるので立ち上がりが鋭い楽器で構成された曲やデジタルでの打ち込み系の曲に合っています。

  • ナチュラ
    音の定位と高域の伸びが良くなりますが、不要な音の立ち上がり(プリリンギング)が発生します。正直なところ積極的に選ぶ理由はありません。

  • クリーン
    音の定位、分離、音場を重視するならこれです。僅かなプリリンギング、少し高域の伸びが弱いという弱点はありますが、3種の中で最もバランスが取れていると感じます。
    クラシックやジャズのライブなど、音の空間を重視するならこれを選べば間違いありません。

不満点、注意点

デュアルスクリーン

デュアルスクリーン装着状態ではUSBが使えない

デュアルスクリーンとの接続は本体のUSB Type-Cポートを使用します。アダプターを使えば充電はできますがファイルの転送やUSB DACの使用はできません。
これが地味に不便でPCから曲を転送したいときにデュアルスクリーンをいちいち外さなくてはいけないなどUSBを使った充電以外を行うには一手間掛かってしまいます。音質の向上を図ってUSBのポータブルアンプを使おうとするとデュアルスクリーンを使用しないという選択を迫られます。
ROG PhoneのようにサイドへUSBポートを設けデュアルスクリーンとの接続は専用端子で行うなど、デュアルスクリーンを装着しても利便性を損なわないようにしてほしかったです。

デュアルスクリーン装着状態ではイヤホンジャックの使用が難しい

V60本体には3.5mmのイヤホンジャックがあります。デュアルスクリーンにも穴が開いているため使用することは可能ですが、これがまた実際に使おうとするととんでもなく面倒なんです。

f:id:abusan3225:20210802161712j:plain

ちょっと見づらいのですが、本体側のイヤホンジャック中心とデュアルスクリーン側の穴の中心が1~2mmほどずれています。この少しのずれのためにケーブルと端子を繋ぐ太くなった部分が入らないんです。

f:id:abusan3225:20210802162444j:plain f:id:abusan3225:20210802162502j:plain これ、入っていません。太い部分が邪魔して入りません。太い部分の直径は約8mmです。

f:id:abusan3225:20210802162616j:plain f:id:abusan3225:20210802162634j:plain SoundBlaster GC7に付属していたケーブルは正常に動作するところまでしっかり入ります。直径は約6mmです。

f:id:abusan3225:20210802162751j:plain こちらはかなり前に購入したAUXケーブルですが、入ったら抜くのに一苦労します。直径は約7mmです。

f:id:abusan3225:20210802163536j:plain 穴の形状は少し切り欠きがあるため90°曲がったタイプに配慮したんだと思いますが……

f:id:abusan3225:20210802164017j:plain f:id:abusan3225:20210802164101j:plain Pioneer SE-CH9T MLです。奥まで入っているように見えて僅かに届きません。一応鳴りますが不安定でノイズが入ることもあります。

f:id:abusan3225:20210802164209j:plain もう少し小さいASUS ROG Cetra II Coreでもちゃんと入りません。少し動かしただけで外れてしまう状態です。
あの切り欠きは全く意味がありません。

デュアルスクリーン装着状態では下記の条件に合う3.5mmケーブルのみが使用可能です。

  • 端子先端から約2cmまでの太さが直径6mm以下であること

この条件から外れたケーブルを使用すると正常に動作しないばかりか抜けなくなりケーブルなどが破損する恐れがあります。
僕はSHUREの23cm延長ケーブルを削って使っています。

Amazon.co.jp: SHURE 延長ケーブル (23cm) ブラック EAC9BK 【国内正規品】 : 家電&カメラ

先端から1.8cmで太さが7mmを超えてしまいますが、入るところまで半周ほど削ってやれば使用できます。加工は自己責任でお願いします。

このように延長ケーブルを使えば解決できますが、延長ケーブルを使用すると音質に影響があります。1万円クラスのイヤホンならあまり差を感じないと思いますが、数万円クラスのイヤホンとなると延長ケーブルを通すことでの影響は無視できません。Acoustune HS1300SSと延長ケーブルを組み合わせると明らかに高音や解像感が悪くなります。
こんな面倒な仕様がありながら付属品として延長ケーブルの一つすら入れていないのはちょっとダメでしょう。LGがなぜスマホ市場から撤退したのかわかった気がします。

ソフト面が不安定

Android OSに対してかなりの独自仕様を載せているようで、一部のアプリや一部の機能は正常に動作しないことがあります。
例えばPowerampのロック画面表示機能を使用すると、メイン画面で表示させていてもロックを解除するとサブ画面にPowerampが移動してしまいます。
デュアルスクリーン以外でも指紋認証ジェスチャーナビゲーションの反応が不安定だったり、アダプターでの充電を認識しない時があるなど細かいところに手が回っていない感があります。
サードパーティー製のホーム画面アプリも使用しないほうが無難です。何かしら挙動がおかしくなります。

総評

良い点

  • SDM865 + RAM 8GBは2画面でも快適
  • バッテリー持ちが良く、発熱が比較的少ない
  • デュアルスクリーンによるマルチタスクは画面分割よりも便利
  • デュアルスクリーンを使うための機能がそろっている
  • HiFi Quad DACで普通のスマホよりも音が良い
  • カメラの解像感とHDRモードの色は好き
  • Androidなのでなうぷれができる
  • ドコモ版ならSDM865ハイエンドスマホが7万円台で手に入る(セール中)

悪い点

  • デュアルスクリーンを装着すると一部機能に制限がかかる(イヤホンジャック、USB)
  • ソフト面が不安定
  • XperiaAQUOSと比べると2画面以外は劣る

デュアルスクリーンによるマルチタスクは非常に便利です。サポート機能で使い勝手も良く、そこはかなり考えられているなと思いました。タブレットのようだけどタブレットとはまた違う、マルチタスクに特化した大画面と言えます。しかし便利になるはずのデュアルスクリーンが不便を生んでしまっているところは非常に残念です。
V60最大の利点は7万円台でSDM865搭載のハイエンドスマホが買えるというところです。デュアルスクリーンが無くてもこれは非常にお買い得です。日常の使い勝手を向上させたいならアリだと思います。XperiaAQUOSのような優等生タイプではなく2画面という尖った特徴を持ち、2画面という特徴以外は平凡に仕上げられたスマホです。全体で見れば悪くは無いのだけれど、残念ながらライバルには負けています。2画面によるマルチタスクが必須ではなく、カメラやオーディオに重点を置くのなら他のスマホにしましょう。

以上、LG V60 ThinQ 5Gのレビューでした。