Abusan’s Journey

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Sudio T2 レビュー 「使い勝手やデザインは良いが、音は……」

9月に発売されたSudioというメーカーのT2というワイヤレスイヤホンを購入しました。

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Sudioはスウェーデンオーディオメーカーです。どちらかというと新しいメーカーで、Shaping Soundというフレーズとともに複数の完全ワイヤレスイヤホンを販売しています。
今回のT2というモデルはSudioの中で最新モデルとなる製品で、お値段は14900円ですがセール中は11175円で購入可能となっています。

開封

外箱

f:id:abusan3225:20211116151910j:plain f:id:abusan3225:20211116152108j:plain 約15kという価格だけあってミドルクラスとして十分な質感の箱です。最近流行りのマットな質感ではなく光沢のあるタイプです。

f:id:abusan3225:20211116152206j:plain 外箱を1段階外した状態。Sudioがブランドメッセージとして使用している「Shaping Sound」に通ずるようなメッセージが書かれています。とりあえずGoogle翻訳にぶち込んでみたら「没入型サウンドで人生を形作る」という意味だそうで、要は音質がいいよってことですね。

中身

f:id:abusan3225:20211116152827j:plain 箱を開けると卵とご対面です。
プラスチック感を無くして質感を上げるために柔らかい印象のマット仕上げとなっています。見た目も手触りも良く高級感を感じます。

f:id:abusan3225:20211116153807j:plain 付属品はイヤーピースにUSBケーブル、布です。イヤーピースのサイズは本体についているものを含め4種類です。付属品まで含めて質感が統一されているのは良いですね。

f:id:abusan3225:20211116154840j:plain f:id:abusan3225:20211116154853j:plain f:id:abusan3225:20211116154907j:plain 充電ケースと本体。先に書いたように柔らかさがあるマットな質感で綺麗に仕上げられています。15kでこの質感は良いと思います。

レビュー

いつも通り再生機器はFiiO M11 Plus LTD AAです。トータルで約60時間ほど使用しました。

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もう面倒なので最初に書いてしまいますが、予算15kでワイヤレスイヤホンを買うなら、音質面でT2を買う理由はありません。

音質

  • 定位に問題はなく解像度も良い
  • 音場は適度に広がりがあるが、音そのものの響きが弱く感じる
  • 音のバランスに問題あり
  • コーデックはSBCのみ

コーデックがSBCのみというのは価格から考えるとナシよりのナシなんじゃないかと思います。せめてAACくらいには対応してほしかった。

音のバランス

T2は各音域のバランスが明らかにおかしくなっていまして、高音は男性ボーカルでも強く刺さるときがあるほど歪んでいる、中音は女性ボーカルの声が擦れている、低音が非常に強く主張してくるなど全く良い印象を持てませんでした。中国製の安い謎のメーカーのTWSのほうが音のバランス自体はまだマシなんじゃないかと思えるくらい音のバランスは酷いものになっています。

高音

強い歪みがあり男性ボーカルであってもサ行の刺さりを強く感じます。そして刺さりを感じる割に曇った印象もあります。
SBCコーデックによる歪みかと思ったのですが、歪みがそれほど発生しないであろう楽曲でも歪んでいるためドライバーから出ている音自体に問題があるのでしょう。

平沢進の金星はもっとも悪影響を受けます。アコギの音は歪み、ボーカルはとにかく刺さります。男性ボーカルとしては高い声であることや、金星という楽曲自体が刺さりやすい作り方をされているというのもありますが、それでも「水かさよ増せ」のところの刺さり方は聞くに堪えません。

中音

中音は引っ込んでいるようなバランスになっていて伸びが全く足りません。ボーカルに集中して聞こうとしても低音の主張が激しくて疲れます。

終盤の伸びが醍醐味な曲ですが、このイヤホンでは楽しめません。

如月千早の透き通った歌声によって雪が舞う白銀の世界が表現されている曲ですが、T2で聞くとボーカルの擦れが気になります。

低音

低音は100Hz付近から下の音域をがっつり強調するようになっていまして、下支えのために裏に入った低音ですらはっきりと前に出てきます。特に60Hz以下のサブベースが酷く、その音域が入った楽曲を聴くと低音だけを聞いているような気分になります。低音を強くして高音の刺さりを抑えたり暖かい音に整えるというチューニングというわけではなく、とにかく低音を強くしただけというもので音楽のバランスを崩してしまいます。

サブベースの低音が使用されている曲ですが、T2で聞くと低音の主張が激しく常にドンドンという音圧の強い低音に襲われます。EDM系は特に相性が良くないですね。

瞳の中のシリウスは冬の空を思わせるようなキラキラとした高音と綺麗で伸びの良いボーカル、そして下支えの低音が程よくバランスした曲ですが、T2で聞くと低音ばかりが主張し、ボーカルは引っ込んで擦れてしまいます。

低音の確認に使う曲です。最初から約100Hz→65Hz→50Hzと変化する3段階の低音が入っています。最初の100Hzは特に問題なく聞こえますが、65Hzと50Hzは明らかに強調されています。

何より辛いのは強調されている低音の音質があまり良くないというところです。締まりや広がりが弱くブワついているように感じます。

2秒と15秒あたりにベース域を主体としてサブベースまで広がるように響く低音が入っていますが、T2で聞くと広がる音の減衰が早くなってしまいます。


ここまで来るとT2でまともに聞くことができる曲を探す旅になりそうです。
サブベースの低音が使用されていなくて高音も多用されていない、元の楽曲のバランスからボーカルがそれほど前に出ていないか重要ではない曲であれば快適に聞くことができるかもしれませんが、そんなものに14900円を払うのであれば同じ価格帯でより良い音が楽しめるANIMA ANW01などをおすすめします。

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装着感

マットで柔らかい質感と小ぶりなデザインによって装着感は良好です。ANCが入っているためかANIMAと比べて僅かに大きくなっていますが、特に不快感などは感じませんでした。

操作性

タッチセンサーは反応する範囲がわかりやすく、操作自体もわかりやすくなっています。
しかし、ANCは2秒タッチでオフ、オン、外音取り込みをループするようになっているため今がどのモードなのかが全く分からないという問題があります。それぞれのモードに切り替わった際に効果音が鳴るのですが、その効果音が何を示しているのかがわかりません。なぜここをシステムボイスにせず効果音にしたのか……

アクティブノイズキャンセリング(ANC)

通勤中に試してみましたが違いがわかりませんでした。外音取り込みは少し音が入ってくるなあとわかったのですが、ANCは少し音が曇ったような気はするもののノイズキャンセリングと呼んでいい性能なのかどうかは微妙だと思います。

総評

使い勝手やデザインは良好

15kのワイヤレスイヤホンとしては見た目も手触りも良い質感、装着感の良いデザイン、

音は……

少なくとも僕が好む音質ではないですね。それなりに出来てはいますが、音のバランスと高音の歪みがダメすぎて聞いていられません。強調されて強く響く低音が好きという人に勧めるのも、低音自体の質や高音の歪みがあるため躊躇します。
低音の強調はPowerampのイコライザーを使用して抑え、ボーカルを僅かに上げてやっと聞けるようになりました。それでも高音の刺さりはどうにもならず、純正イヤーピースである程度減衰させて聞くしかありません。

チューニングについて

どうしてこんな調整がされてしまったのかを考えてみたのですが、イヤーピースを変えてみると答えがわかりました。

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とりあえずSpinFitを試してみたのですが、高音の曇りが無くなった代わりに刺さりがさらに強くなり聞いていられないほどになりました。
純正イヤーピースは軸の中に網が入った構造になっていて、その網によって高音を減衰させることで刺さりを抑えていたようです。

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こんなイヤーピース初めて見た

つまりSpinFitやその他の普通の形をしたイヤーピースがT2のドライバーが持つ本来の音ということになり、そしてそのドライバーの音は高音が歪んでサ行がとにかく刺さるような音を出しているということでもあります。
ドライバー自体にSudioの手がどれだけ入っているかはわかりませんが、おそらく調達したドライバーをそのまま使っているんじゃないかなと思います。そこから高音の刺さりを抑える目的でイヤーピースの穴に網掛けを施し、DSPの内蔵イコライザー機能で低音を強調したのでしょう。それはチューニングと呼ぶようなものではなく単なる誤魔化しです。
ワイヤレスイヤホンはDSPを内蔵しているためイコライザーによって音の調整をすることができますが、それをチューニングと呼ぶべきではないと個人的には思います。イコライザーはコストや設計の制約で詰めることができなかった部分や、特定のジャンルや個人の好みに近づけるための微調整で使用するものでしょう。そのためにメーカーによってはイコライザーを設定できるアプリを開発してユーザーの好みで変えられるようにしています。あくまでもドライバーや本体の設計によって音を作りこむことが良い音を生むのであって、イコライザーでの調整もベースが良くなければどうにもならないでしょう。
アクティブノイズキャンセリングも同様にチューニングができていないため性能が出せていないという印象です。使用したワイヤレスイヤホンのコンポーネントに入っている機能をそのまま使っているのでしょう。
T2の使い勝手や見た目、質感は非常に良いのですが、イヤホンはあくまでも音を聞くためのものですので音作りをしっかりしてほしいと思います。特に同じ価格帯にはしっかりとチューニングされたワイヤレスイヤホンが増えてきていますので、Shaping Audioというブランドメッセージを本物にするためにもイコライザーによる誤魔化しではなくしっかりとチューニングされた良いと思える音作りを目指してほしいところです。
ワイヤレスイヤホンはドライバーのチューニングにかけられるコストが有線イヤホンよりも厳しいためイコライザーによる微調整は当たり前とも言えますが、Sudio T2のイコライザー設定は微調整の範囲を超えていますし、調整の結果も良いと感じられない音楽の雰囲気を壊してしまうようなものです。コストをかけられなかったというよりも、ドライバーのチューニングにコストをかけたくない、チューニングできるような技術力がないと言っているようなものです。見た目や質感、操作性で勝負するのは構わないのですが、それは基本ができてこそのものだと思います。

正直なところ少し好みと違うだけならいいかなと思っていたのですが、さすがに看過できないレベルだと思いましたのですべて正直にレビューさせていただきました。他のレビューを読んでみると自分が聞いた音とは全く違う音がT2から出ているようでして、もしかしたら手元にある個体は何かがおかしいのかもしれませんね。
僕個人としては全くおすすめできないワイヤレスイヤホンです。せめて価格が6000~7000円ほどであればまだ良かったと思いますが、さすがに15000円の価値は見出せません。手に取って見たときは良いなと思えるけれど実際に使ってみるとなんじゃこりゃという、典型的な安かろう悪かろうパターンです。しかも15000円という決して安くないそれなりのクオリティを求められる価格帯ですから……